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映画『ノーカントリー』~監督コーエン兄弟の世界観、その絶妙なる構築~

   


皆さん、こんにちは!

今日は、ジョエル・コーエン、イーサン・コーエンの兄弟監督、トミー・リー・ジョーンズ、ジョシュ・ブローリン、ハビエル・バルデム主演『ノーカントリー』に関する記事を書きたいと思います。

 

2005年に発表されたコーマック・マッカーシーの小説『血と暴力の国』の映画化作品であり、アメリカとメキシコの国境地帯を舞台に、麻薬取引の大金を巡っての殺戮劇が展開されます。第80回アカデミー賞8部門にノミネート。作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞を見事に受賞。

特に、助演男優賞を受賞したハビエル・ダビエルさんの殺人鬼の演技が強烈なインパクトを与えます。(この特異な演技表現は、特筆のものなのです。ハビエル・ダビエルさんが演じるアントン・シガーのキャラクターゼーションだけでも必見の価値ありです。)

アメリカとカナダで7400万ドル、それ以外の国で8000万ドル以上の興行収入を打ち立て、コーエン兄弟の、監督としての評価を不動のものにした作品です。

 

映画によっては、各シーンごとに見どころがあり、好きなシーンだけをピックアップして鑑賞する楽しみをもたらしてくれる作品があります。たとえば、クエンティン・タランティーノ監督の作品は、それに値します。各シーンごとに、出演の俳優が自分の与えられた役をアクの強いかたちで表現しているからです。

そのため、シーンそれぞれが、見どころ満載になるという好結果に繋がります。そうなると、ついつい何度も鑑賞してしまい、観る側にとっては『息の長い映画』になります。

 

この『ノーカントリー』という映画も同様のことが言えます。つまり何度も鑑賞してしまう魅力に溢れています。これは、コーエン兄弟による映像構成によるところが大きいものと思われます。アメリカとメキシコの田舎町と荒野の場面を主軸に、そこで展開される殺人劇が、この映画の世界観を構築しています。

喧騒著しい都会の中の暴力ではなく、人も建物も少ない片田舎であるからこそ、そこで展開されるバイオレンスシーンが異常性を際立たせています。

 

荒野と片田舎で展開される世界観の構築

その象徴ともいうべきシーンが序盤にあります。
テキサス州西部の荒野で、シカ科のプホングホーンをハンティングするために訪れた(俳優ジョシュ・ブローリンさんが演じる)ルウェイン・モス狩りの最中、偶然にも殺人現場に遭遇する。麻薬取引が上手く成立せず、銃撃戦に発展したとの予測が出来る状況。

死体が転がる中、好奇心に駆られてライフル片手に現場を詮索するシーンです。このシーンの描き方と、ジョシュ・ブローリンさんの演技に観客は魅きつけられます。日差しが強いテキサスの荒野。死体以外に、存在するのは、モス本人のみ。大量の麻薬が車に積載されたままの現場において、誰かが潜んでいて、自分を攻撃してくるかも知れない恐怖・・・。

 

恐怖に心がドキドキとしながらも、好奇心に駆られて、現場を離れないでいる人の心理。このシーンではそのリアルさを巧みに表現しています。この序盤の場面で、映画『ノーカントリー』のグレードの高さは決まったと言って良いでしょう。

「この後、どのような展開になるか?」
観客は目が離せません。これこそ正にコーエン兄弟の演出力の凄さだと私は思います。この荒野と殺人現場の光景にこそ、作品のテーマが表れています。

 

犯罪とは無縁だと思われる田舎町と荒野。そこで実行される凶悪な犯罪模様の数々。人生における虚無感と、世の中の不可解さの狭間で現代人は幸福を求めて生活をしなければならないという矛盾。序盤のシーンで、この映画で伝えたかったことを垣間見せているコーエン兄弟の演出。

ぜひ、皆さん、機会があれば映画『ノーカントリー』を鑑賞してみてください。コーエン・ワールドの虜となることでしょう。この記事が、参考になれば幸いです。

では、本日も貴重な人生のステージを満喫してください!

 

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