人を演じるための本質(ある映画館、ロビー内での人間模様)
2016/07/04
皆さん、今日は、人を演じるためのノウハウについて書きたいと思います。
俳優をされていない方々も、ぜひ参考にお読みください。
昨日新宿の映画館にて、あるサスペンス映画を観に行きました。
この映画は、SFヒット作品の続編で鑑賞を楽しみにしていました。
しかし、思いのほか凡作・・・。密室での人間ドラマに仕立てあげていましたが、脚本的に少々現実感がなく、観ているこちらも入り込めない印象を受けました。
楽しみにしていたのに、なんだか消化不良。シアターを出て映画館のロビーで、他の作品を続けて観ようかと電光掲示板の上演スケジュールを見ていました。
と、その時、ロビーの受付で中年男性が従業員の女性にクレームをつけているのを発見しました。
大手映画館なので比較的広めのロビーですが、結構な大きさの声でして、かなり目立ちました。
なにやら、会員カードの再発行を今すぐしてほしいと、中年男性は女性従業員に注文をしている。ところが、なんらかの理由で再発行はできないと彼女は説明。
話は平行線。男性の要求と、女性の説得が噛み合わない。
男性もイライラが募るばかり。
男性は、こう言い放ちます。
「あんたがたは、私をこんなに不愉快な気持ちにさせてまで、なにを守ろうとしているの!?」
この類の発言を大きな声で繰り返す男性。必死に受け応えする女性従業員。
しかし、納得いかない男性の苛立ちは募るばかり。
私は、外から見て「なんで、そこまで怒る必要があるんだろう?」と思いながらも、
正直な話、先ほど見た映画よりもハラハラドキドキ感がある面白い情景でした(笑)
なにもそこまで会員カードの再発行にこだわらなくも良いのに、と個人的には思いました。
しかし、
「もし、この男性のような役を演じなければならないとなれば、どうするか?」
と、私はふと考えてしまいました。
この男性は、女性従業員の態度や発言に納得できない。どうしても、譲れない理由がある。
ロビーで大勢の人にジロジロ見られているのに、まったく気にしていない。
それほどまで怒りは沸点。
なぜなのか?
この男性の心理に何が起きているのか?
この人はこの人なりの(納得までの)譲れないラインがある。
個人的には、同じシチュエーションでここまで怒ることはない自分であっても、この人を理解してあげなければならない。
役を演じるうえで、私情は挟んではいけません。
いまこのロビーにて怒り心頭の男性(=役柄)は、ここに至るまでに、いろんな人生模様を背負ってきているわけです。
女性の発言や態度に対して、ここまで人目をはばからず怒ってしまう理由は何か?
ある人は、再発行できないのはしょうがないと、その場を素直に立ち去ったかも知れません。
ところが、この人は怒りをぶちまけてしまう。
この男性(=役柄)には、自らの『人生スタンス』があるわけです。
そこが、理解できたとき、初めてリアルに役を演じることが出来る。
台詞を覚えて流暢に言えることももちろん大切です。
と同時に彼の心理を理解し、「その心理がどこから来たか」を掴むことが出来てこそ真実味のある演技が出来る。
『人間理解』
それが、俳優の仕事です。
この日は続けて観たい映画がなかったので、映画館を後にしました。
果たして、二人は、上手く折り合いがついたのでしょうか?
穏便に事が運んだことを願っております(笑)
では、皆さま、今日も人生の良きステージをお過ごしください!